21. 真空管 高圧スイッチング電源(B+ 供給用, 60W)      製作日:2015/03/22、公開:2021/03/21



   ※ 注)これは高圧(250〜400VDC)を出す「真空管スイッチング電源」です。 取り扱いの際は感電に注意!!
     真空管テレビの水平偏向回路をアレンジして、フライバック型 SW 電源を作製し真空管アンプの外付け
    B+ 供給用電源としました。ヒーター電源を別に用意し各アンプで使える様、出力電圧 250V〜400V の
    範囲で調整可能です。最大出力電力は 一次側 SW 電流 1.5A peak max を限度として、約 60W です。
     現在ならば SW 電源は半導体を使って簡単に組めますが、敢えて真空管で組んでみて、当時の水平偏向
    回路の雰囲気を味わう趣向です(=単なるモノ好き・・)。本機では、電源部の整流に半導体ダイオードを
    用いますが真空管テレビでも半導体整流器を使っていた為、ここでの半導体使用については可とします。
    回路構成は、テレビの水平偏向コイル駆動を無くし高圧整流回路を低電圧・大電流化するもので、比較的
    シンプルです。 各要素回路を試作・調整して組み合わせ、全体回路を下図の様にしました。(下に続く)
※ 下図は 小さく見えにくい為、大きな図を用意。>>> こちらを参照 ・・・ Flyback SMPS (GiF / 50kB) |



   ※ 以下、細かい説明が多くなる為、言い切り や「である調」で 記述していきます。 ============
    @ 主回路:フライバック型 SW電源。SW=ON 時 トランスにエネルギーを溜め、OFF で二次側へ放出。
    A SW 素子 V3:最大級の水平偏向出力管 40KG6A/PL509。損失に注意すれば Ik=1.5A peak 流せる。
     これを動作させる電源は AC100V を半導体ダイオード SD-1 X2 個で倍圧・全波整流した Eb=270V。
    B トランス T1:フェライトコア PC40_EI-40の中足を 1mm 削り ギャップとし これに予め UEW 線を
     必要ターン数(150T:480T, L1=4mH)巻いたボビンを嵌めて、固定する。コアのサイズについては
     もう少し小さい物でもよいが、加工性や真空管の大きさとのバランスを考慮し、EI-40 サイズとした。
     巻線の構成は、コア中心側から 二次(1)=200T・一次=180T・二次(2)=280T のサンドイッチ巻き。
    C 二次側整流素子 V4:最大級のダンパ管 42EC4/PY500。OFF のタイミングで両端に 約 1kV 掛かる。
    D 基準発振器 V1:12BH7A によるカソード結合型 ノコギリ波発振回路で、周波数を約 25kHz に設定。
     本当は 直線性の良い三角波が理想だが、制御範囲が余り広くない為 ラフなノコギリ波で試している。
    E PWMパルス発生器 V2:同じく 12BH7A でシュミット・トリガ回路を組み 入力電圧を変える事により
     出力 ON デューティ調整。入力は、上記ノコギリ波と 出力側から帰還・変換した電圧を重畳した物。
     また、この回路は Eb=0V, GND=-130V で動作させて、上記Aのコントロールグリッドを駆動する。
    F 出力誤差アンプ:定電圧放電管 V7:VR150-MT を基準電圧とし、出力を分圧した電圧と比較・増幅。
     アンプの真空管は V6:6BX6 を使用。その負荷は、下記「手作りフォトカプラ」のネオン管である。
    G 手作りフォトカプラ:本機を真空管時代に合わせた部品で構成したかった為、発光側=ネオンランプ、
     受光側=CdS セルで組み合わせ 手作りした。両者を廃ボールペンの軸に同封し、外部より遮光した。
     CdS セルについては、真空管の時代から 一部のテレビにおいて画面の輝度調整等に使用されている。
    H 注意点: 本機に限った話ではないが、トランスは飽和したら「一巻の終わり」で 危険な状態となる。
     飽和を避ける為、定常動作時のトランス磁束密度(傳)を 回路図右側の式の通り小さめにしておいて、
     動作開始時 SW 素子の ON 時間が長い状態でも、真空管が(温まる途中で)内部抵抗の高い事を電流
     リミッタとして活用し、定常動作状態へ スムーズに切り替わる様に設定する事が ポイントとなった。
     この辺りの調整については、トランスの巻き直し・ギャップ調整等も含め、カット&トライを要した。

   【 製作の動機等 】 真空管テレビについては、約 40年くらい前に 近所の電器屋から中古品を貰うなどして
     何台か修理の真似事をしたものですが、現在では受信に地デジ変換器が必要になって 場所も取る為、
     入手を控えています。 ただ、偏向回路等のテレビ独特な回路を 何かに使えないか、考えていました。
     そんな中、以前 製作した真空管アンプ(No.1: 6360 p-p Amp)の電源トランス B巻線が 数年前より
     唸る様になり「ジー」という音が耳障りで ネジ締めを調整しても直らない為、長期の使用により含侵
     ワニスが痩せたか?という状況になりました。トランスは 50年以上も前の物で仕方ないですが、電源
     トランスを交換するのは大工事で、同じ形状の代替品を探すのも大変です。 そこで、外付け B電源を
     作製する事にしましたが、単純に従来回路を持ってくるのでは面白くないので 本機を製作しました。

   【 性能について 】負荷変動は、儼o=2V 以内(Io=30〜120mA, Vo=300V, Vin=100VAC)と 安定です。
     また 出力リップルも、アンプ側に 100μF 程度の平滑コンデンサを追加しておけば、商用周波数成分
     も含め Vo(ripple)=0.5V p-p 以内となり 実用的なレベルと考えます。負荷変動に対する応答速度は
     CdS セル使用により 30ms 程度と遅い為、追加した平滑コンデンサを兼用し 補う必要があります。
     なお、上記の通り 応答が遅い素子(CdS セル)が入っている為、系が発振する恐れは ない様です。
     本機の重量は 1.5kg で、No.1 のアンプで使用した山水トランス (P-44B:3.1kg)、チョークコイル
     (C-10-200:2.0kg) 合計重量の半分以下です。ヒータートランス (6.3V, 3Ax2) を別で用意しても
     1.5kg 程度なので アンプの軽量化に有効と考えます。なお 今回は、半ば試作機だったので試行錯誤
     する為に大きなシャーシで組みましたが、部品配置の工夫により もう一回り小型になると思います。

   【 内部波形・他の写真 等 】 以下、代表的な負荷条件における内部波形・動作中の写真などを示します。
     オシロスコープのプローブ引き回しの影響で、ノコギリ波が少し歪んでいますが、PWM 制御をして
     いる状態が分かります。V3(40KG6A) の G1 駆動パルス波形が丸い為 SW ノイズは少ない様です。
     更にその下の写真は、100V 用電球 3個を直列にした物を負荷として、動作させているところです。
     2020年 末の時点で、製作後 5年が経過しており、平均で毎日 1時間は使用した計算になりますが、
     特に不具合の発生はなく、V3 (40KG6A) の内部が少し黒ずんだ程度で、問題なく動作しています。
     発振周波数も 25kHz でズレは殆どないです。試験運用の充分な時間を経たと考え、公開しました。

※ 波形が小さく見えにくい為、大きな画像を用意。こちらを参照 >> SMPS_Waveform (Gif / 377kB) |









    下は、No.1: 6360 p-p アンプと組んだ状態の写真。整流管ソケットの NC ピンを使い B+ 電源供給。
    日常の使用時、アンプ出力は 3W もあれば充分な為、B+ 電源を 280V (100mA) に設定して使用中。



参考資料の画像(↓)です。これによると、電力は 70W 程度まで取れそうなので、多少 余裕があります。





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