50. 真空管ラジオ 東芝 かなりや PS 5YC-556 メンテナンス 詳細    公開:'22/03/07、追記:'22/03/26

【 2022/06/12 追 記 】補修用 VR(SW付き A 500kΩ)を 入手、一番下で 修理の前加工について記述

当ホームページ 50個目!の 記念すべきテーマとして、真空管ラジオの詳細なメンテナンスを記述
していきます。No.18 (Classic Radio Collection) では、ホームページ開設前にメンテした物しか
掲載しておらず、どの様な手入れをしたか忘れてしまった事も多い為、久しぶりに入手した掲題の
ラジオを手入れする記録を付ける事で備忘録とします。本ラジオ(東芝 かなりや PS 5YC-556)は
筆者が40年位前に一度メンテしたのと同型・同色品で、当時は動作原理もよく分からずに鳴らして
喜んだレベルだったので、今回は不良部品の交換を初め、キチンと清掃・調整しようと思います。
まず下の画像は、ヤフオク!に出品されていた時の元の写真で、年代モノ(1962)の割に綺麗です。

【 追加 '22/03/19 】裏蓋 内側の配線図・糸掛図・配置図も綺麗 (↓)、これはメンテ時に助かる・・ //


出品者によると放送受信はするとの事ですが、上の写真の通り周波数表示窓の指針が曲がっていて
少し心配・・正面向かって右方向に衝撃を受けたのかも。手許に届いた現品を見ると、それなりに
汚れや部品の劣化がある為、分解・清掃・補修します。まず真空管を見ると、下の写真の通り全て
東芝製で ロットも 「2A」(1962年1月製)で揃っており、製造当時の儘である可能性が高いです。
【 追記 '22/03/26 】入手後、一度 火を入れ、音が出る事は確認済。→ 音量VRが絞れず 音が大きい。

ツマミ 及び バリコンダイヤル糸から周波数表示の指針を内部で外し、シャーシを取り出します。
ACコードも、汚れを落とす為に半田付け部から外します。シャーシは小型で、W280×D56×H26
しかなく、筐体も出力管・整流管ギリギリの高さなので、天板に防熱用シートを貼ってあります。
(注:筐体 = 外側のプラスチックケース、シャーシ = 内部の金属シャーシ を 指しています)

シャーシは60年前の物としては錆もなく綺麗です(↓)が、さすがにゴム部品は劣化しています。

特にバリコンを浮かせるゴム足は、一旦 融けた後、再度 固まった状態。金属部を傷つけない様に
注意して これらを取り除きます。またACコード・パイロットランプ用ブッシングは、カチカチに
固まった状態、これも外して新品と交換します。最近は良い樹脂部品が出回る様になり、耐熱性の
高いクロロプレンゴム製ブッシングを見付けたので、使ってみます。以下、メンテ時の説明です。

バリコンのプーリーを外す際は、ダイヤル糸の掛け方を忘れぬ様にテープで仮止めします。(↑)
新しいブッシングを バリコンの台座に履かせ、ネジで固定し(↓)、再度 プーリーを取り付け。


【 写真追加 ↓ '22/03/26 】バリコンが(弾力性も keep しつつ)しっかりと固定された様子 //

下の写真は、[1] 周波数ダイヤル指針(曲がり修正済)、[2] 筐体内ガイドレール、[3] シャーシ
用ゴム足、[4] 固定ねじ、[5] 外したツマミの状態です。各々、次のメンテナンスを行いました。

[1] ダイヤル指針:元は真鍮の金色だったが表面塗装が黒く変色。→ 磨いて透明ラッカー塗装。
[2] ガイドレール・[3] シャーシ用ゴム足:汚れを落として継続使用。 ゴム台座は弾力も残存。
[4] 固定ねじ: 灰色ゴムが劣化しボロボロ。通販サイト(モノタロウ)で似た物を見付け交換。
[5] ツマミ:溝に入った汚れを、住居用洗剤+先の細い歯ブラシで清掃。→ 見違える様に綺麗。


次は、電子部品(CR)の劣化調査で、結論から書くと下の回路図の通り かなり問題ある状態です。


ソリッド抵抗器:概ね200kΩ以上の物の抵抗値が高く変化、1.5倍に達している物まであります。
コンデンサ:所謂ペーパーコン。100VDC程度の高圧を印加し、リーク電流を測定して等価抵抗を
計算すると数100k〜数MΩしかなく、この為 出力管 30A5のG1(制御グリッド)バイアス電圧が
プラスに触れてしまい、エミ減気味になったのかも知れぬ・・。 以下、シャーシ内の部品写真。

交換した部品は、上の回路図にある青い矢印の先の定数の通りで、リークが増えたペーパーコンと
抵抗値が大幅に増えたソリッド抵抗。またノイズ低減の為、AVCラインに 200pFパスコンを追加。
下の写真は交換したRC部品の例で、抵抗器は炭素被膜型、コンデンサはフィルム型にしています。


更に音量ボリューム(VR)の残留抵抗が大きく、音を絞れない問題あり。この後も暫く続きます・・・
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===[ 可変抵抗器 メンテナンス (↓)、ではなく 魔改造? 興味の無い方は飛ばして下さい・・・ ]===
【 追記 '22/03/19 】
音量VRは元々全体の抵抗値500kΩの物が900kΩに増加、SW-OFF直前の残留
抵抗は何と 43kΩもあり、分圧比は 43/900 (-26dB) なので、12AV6 ゼロバイアス増幅の利得
33dB+電力増幅 (30A5)により、VRを絞っても放送を受ければ 数10mW位は出力する訳です。
本来ならばVRを交換すべきですが 手持ち品がない為、応急処置的に 分解〜微調整を試します。
下の写真の番号に対応させ説明 : [1] VRを外して汚れを落としたら、4ヶ所の爪を折らない様に
そっと開き、SW部分を取ります。 [2] このVRは、アルミ製の軸の頭を潰して 摺動子の基板を
固定してあります。 [3] 一旦 摺動子の基板を外し、ネジで固定できる様にタップ加工します。
また、同時に摺動子も清掃します。 [4] 摺動子の基板が、うまく固定できる事を 確認します。
[5] 摺動子の板金をカットし、回転範囲を微調整して半田付けします。 [6] 調整のポイントは、
SW-OFF時の摺動子位置を抵抗体から外れる直前とする事です。長さにして 3mm 程度ですが、
残留抵抗を 11kΩ に低減でき、分圧比も 11/900 (-38dB) となり、少しですが 改善しました。
しかし、まだVRを絞った音量は大きく もう少し下げたい。そこで VR交換までの暫定策として、
AVC回路の信号出力との間に抵抗を追加し、約 4dB 落としました。これで音量は ちょうど良く
なりました。大きな音は出なくなりましたが、VRを最大にして使う事はない為、良しとします。

下の回路図は、音量VR 周辺の概略改造図(中波ラジオ 受信状態)で、AVC 回路の負荷を最適化
する為、680kΩの抵抗を追加しています。 || 回路はここまでとし、次は筐体の清掃をします。

プラスチック筐体の清掃です。初めにざっと水拭きして汚れを落とし、選局用のダイヤルパネルも
外しますが、ここで構造を見ると パネルの4ヶ所に突起を付け、それを筐体に設けた角穴に入れて
熱で溶かして固定 (!)。これは外すのが大変・・・ >> ノミ(鑿)まで使い やっとの事で外しました。

スピーカーも外し 内側のホコリを取り除きます。下の写真の通り、白い塗装の部位はかなり汚れて
いるので、住居用洗剤と歯ブラシで清掃。ここで要注意なのは、強く擦り 塗装を落とさぬ事です。
本機は プラスチック筐体なので、全体を浸け置き・水洗いしたいところでしたが、塗装への影響や
内側に張ったスピーカー用ネット(とても薄い=右下の写真)の破損が心配だった為、部分洗いに
留めました。選局用ダイヤルパネルについては 汚れを落とした後、突起部を白く塗っておきます。

まだまだ続きますが、年度末で本業が忙しくなってきました。「宮仕え」の管理人の辛いところ・・・
======【 追記 '22/03/26 】===============================
・・・と言ってボヤいても仕方がないので、一旦 組み立てて、「ならし運転」します。下の写真は電源
コードを再配線したシャーシの状態で、各部のゴムブッシングも交換済です。アンテナ・アース線も
新品と交換 (KV, 0.3sq)。本当は高耐圧(KIV)が良いが、実際は 屋外にアンテナを張る事もないので
良しとします。 取り敢えず、同調点は ズレていない様なので、この状態で 火を入れる事にして・・・

あ、今 気付いたんですが、本機の電解コンデンサは シャーシ端にあるブロックケミコンのみです。
高温な整流管から ヒューズを隔てて離す配慮をした為か、劣化が少ない様で ハム音が気にならぬ。
(出力管 30A5_G1バイアス電圧をカソード抵抗のみ・パスコン無しで生成 → 電流帰還の効果かも・・)

上の写真は、交換したアンテナ・アース線を付ける前の状態。 次は、天板の防熱シートの補修です。
防熱シートは石綿状の素材が層間ハク離した状態(一番上の写真を参照)。形を整えつつ、接着剤を
浸ませて圧着 (↓)。使った接着剤は液体状のABS用という物で、耐熱性も少しは期待できそうです。

補修した防熱シートをプラスチック筐体の天板(元の位置)に貼って固定。イイ感じに直りました。

上記の如くメンテナンスした結果、漸く見られる姿に組み立てられました。写真を貼っていきます。



地元局 BSN 長岡 1062kHz 受信中 (↓)。 ANTコイルが空芯で 垂直の構造な為、感度はイマイチ。
暫らく「慣らし運転」して 問題が出ない様であれば、単一調整がズレていないか 確認の予定です。




【 2022/06/12 追 記 】 漸く 補修用のVR(SW付き A 500kΩ)を、祐徳電子さんより 入手しました。
軸が短いので、このラジオ用に延長する加工が必要です。下の写真の様に、リン青銅板を筒状に加工
しておき、他の中古VRをバラした軸をカットした物と合わせ、嵌めて固定する様にします。(続く)





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注)この下のスペースは、スマホで閲覧時 CMが出て 隠れる部分がある事を対策する為、追加した物です。







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